糖尿病の患者さんにはいろいろな眼の合併症が起こります。
この中でも網膜症は糖尿病の3大合併症の一つです。
3大合併症とは
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病神経障害
- 糖尿病腎症
です。
網膜には多くの毛細血管が分布しています。
糖尿病の患者さんの血液は糖分を多く含み、粘性が高いために毛細血管がつまったり、また血管の壁に負担がかかると考えられています。
その結果、徐々に酸素や栄養が不足してきます。その不足を補うために新生血管とよばれる新しい血管ができます。
新生血管は出血しやすく、眼底出血や硝子体出血などが起こってきます。
これが網膜症の進行した状態です。進行すれば失明もありえます。
現在、成人の失明原因の第1位は糖尿病網膜症です。
糖尿病を発症してから10年で約20%、15年で約50%、25年では約80%の患者さんが網膜症を合併するといわれています。
自覚症状がない場合でも糖尿病手帳などを活用して、内科、眼科の両方で定期的な治療、経過観察を受けるようにしましょう。
糖尿病網膜症の病期と治療
糖尿病網膜症には病期(進行のぐあい)があり
病期により治療方法が異なります。
病期は通常の眼底検査の所見より明らかな場合もありますが
診断のために蛍光眼底検査(FAG:fluorescein fundus angiography)
が行なわれる場合が多くあります。
この検査は眼科では40年以上前から行われているもので
血管からフルオレセインナトリウムという造影剤を注射して、
網膜の血管などの写真を撮影する検査です。
ではそれぞれの病期ごとの所見、症状、治療を大まかに示します。
単純網膜症
症状:この時期には白内障などの合併症がなければ視力低下などの自覚症状はありません。
治療:血糖コントロールが第一です眼科での治療はなく経過観察となります。
前増殖網膜症
症状: 通常は自覚症状はほとんどありません。
治療: 眼科で光凝固治療をおこないます。血糖コントロールも重要です
増殖網膜症
症状:この時期には視力低下などの症状が伴います。
治療: 眼科で光凝固治療をおこないます。
硝子体出血や網膜剥離に対しては硝子体手術を行うこともあります。
やはり血糖コントロールも重要です。
その他の糖尿病網膜症の所見
黄斑症黄斑(眼の構造の図の⑦)が循環不全になりむくみ、視力が低下します。
黄斑の拡大写真とのう胞性黄斑浮腫